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ジョムソン街道の旅 その3

そのうち、エンジン音が強くなり、急いででシードベルトをしめる乗客たち。
特に客室乗務員からの注意はありません。そしてまだキャプテンは来ません。
後ろの席に座ったのかなと~と半分心配しつつも飛び立つ飛行機に神経を集中しました。
というのも、この飛行ルートは「落ちる」ことで有名なんです。
ジョムソン街道は、「カリガンダキ」という川に沿って作られていて、ゴールであるジョムソンは7~8000メートル級の山々の間を縫うようにして飛んでいくのです。
飛び上がってしばらくすると、目の前に真っ白な頂きが飛び込んできました。
(きっとアンナプルナかな?)などと思う余裕はありません。
少し飛ぶと気流の関係なのか「ガクンガクン!」と飛行機が揺れます。
まるで、遊園地の魔法のじゅうたんに乗っているみたいです。
その揺れにも驚いたのですが、もっと驚いたのは周りの乗客たち。
みんな一斉に「ウゥッ!」と言って吐き始めました。ほぼ全員です。
客室内に立ちこめるすっぱいニオイ・・・こちらまで「ウッ!」となってきます。
窓の外を見ると左右に真っ白な山が迫っています。
前に進むほどガクンと落ちる高低差がひどくなってくるので(頼むから無事に着きますように)ともう必死で祈ります。
こういった高い山の間の谷には強い風が吹いていて、ここの場合午前中は麓から山へ、午後は山から麓へ強風が吹き、飛行中に風が変わると飛行機が全く進まないように感じることもあるそうなんです。
そういえば昔知り合いがネパールに行く直前にこの飛行機が落ちて大騒ぎしていたなあ・・・などと縁起でもないことを思い出しながら座席にしがみついていました。
時刻は11時。
今日だけいきなり(ちょっと早めに)と風が切り替わらないように祈りながら、小さな飛行機はなんとかジョムソン空港に降り立ちました。
窓の外を見てみると、「ここは空港!?」と思うような砂利の滑走路に、プレハブのような空港事務所がぽつんとひとつあるだけ。そこにたくさんの人が集まっています。
この頼りなさげな空港も、厳しい山の環境を考えると(よくやった!がんばって作ったね)と思えてくるから不思議です。
何はともあれ無事出発地点に到着。
よかった、これで旅が始められると安心して、シートベルトをはずし、後ろを振り返ると・・・
客室後方、山積みになった荷物の中にキャプテン発見!
いったいキャプテンに何が起こったのでしょうか!?
つづく
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